2018年12月31日月曜日

2018 Best 20 Singles

2018年に聴いたトラックから20選です。
ひとことコメントだけつけてます。

20. Kendrick Lamar feat. SZA - All The Stars

「Black Panther」のサントラより。プロデューサーのAl Shuxが好きなんですよね。KendrickとSZAのタッグも再びで嬉しいコラボ。

19. G Flip - Killing My Time

オーストラリアから謎の宅録女子G Flipの1曲。天真爛漫なエレクトロポップで素直に良いです。今後に期待。

18 - Rita Ora - Let You Love Me

Girlsに見限られたヲラ様の御勝負曲。そこそこヒットしたけど、そんな事よりライターのNoonie BaoとPC MusicのEASYFUNのタッグが相性抜群。

17. Kris Wu - Like That

元EXOの中華メンバーによるアーバントラック。ドリーミーなサウンドが涼やかで個人的にサマーチューンとしてヒットしました。

16. Tove Styrke - Sway

スウェーデン出身のポップシンガー、3rdアルバムの表題曲。バウンシーなサウンドとヘンテコなヴァースが気持ちいいポップソング。MVも必見。

15. Alina Baraz - Coming To My Senses

官能のスロウ・ジャム。EP『The Colour Of You』は硬質なサウンドとエロティックな雰囲気がマッチしてハマりました。

14. Let's Eat Grandma - Hot Pink

ティーンガールズデュオによるエレクトロバンガー。SOPHIEがプロデュースしてますが、アルバムの他曲もこのクオリティに匹敵するポップチューンぞろいです。

13. Bebe Rexha - Ferrari

ファビュラスなバッド・ビッチ(?)おべべのアルバム冒頭曲。ロッカースタイルも様になってますね。自転車で爆走するときにオススメです。

12. NCT U - Baby Don't Stop

K-PopボーイズグループNCTの派生ユニットから、アーバンなシンセトラック。硬質なビートと呪術的なヴァースが癖になります。Kポ沼に堕ちるきっかけとなった曲。全ては推しがため。

11. Charli XCX feat. Troye Sivan - 1999

ポップスシーンの超重要人物Charli XCX、そしてクイア界の若きスターTroye Sivanのコラボ曲。全力'90sパロディなMVも最高ですが、チップチューンなトラックも至高。早くアルバム出してね!

10. Vera Blue - All The Pretty Girls

豪メルボルンのSSW、Vera Blueの新曲。去年は"Lady Power"というウーマンアンセムをリリースしましたが、お次は女の子を泣かせるKUSO野郎へ捧げる1曲。可憐なポップで好き。

9. Kylie Minogue - Dancing

めでたく50歳のゴールデンジュビリーを迎えたKylie様の新境地。カントリーまでやって「私たちは輝いている」なんて言われたらもう、女神様の仰る通りです。

8. Janelle Monaé - Make Me Feel

プリンス殿下を受け継ぐJanelle嬢のシングル曲。Julia Michaelsがペンを執り、Mattman & Robinプロデュースの黄金タッグ。これ以上なくファンクでポップでカッコイイ、必殺曲だと思います。

7. Empress Of - When I'm With Him

オルタナ・ポップアーティストEmpress Of、待望の2ndアルバムから1stシングル曲。流麗なシンセをベースに切ないメロディを紡ぐキラーチューン。秘める思いを抱く歌詞も素敵です。

6. Allie X - Little Things

カナダ出身のSSW、Allie XのEP『Super Sunset』収録曲。歯切れの良いヴァースと熱を帯びていくコーラス、パワフルなビートが聴いていて気持ちい良い。彼女らしい切なさ全開のメロディもツボです。

5. Kim Petras - Heart To Break

ドイツ出身のポップ・シンガーKim Petrasのディスコな玉砕覚悟アンセム。Arianaライクな張り上げ歌唱もお見事ですが、2018年のポップソングでも最高峰のポップネス。フルアルバムが待ち切れない!

4. Kacey Musgraves - High Horse

Kacey Musgraves渾身のディスコ・チューン。御本人もノリノリなのがイイですね。洗練されたプロダクションと秀逸なメロディにノックアウト。あなたもきっと口ずさむハズ、"はぁあぁほおぉ〜 hmm〜〜♫"

3. Cardi B feat. Bad Bunny and J Balvin - I Like That


絶好調のCardi Bによる、凶悪なまでに強力なブチアゲトラップ。ラテンのムードも後押しして2018年イチのアゲっぷりを記録。今年は彼女が1年にわたってシーンを湧かせてくれました。ママCardiにも期待したいです。

2. Troye Sivan - My My My!


SNS芸に磨きがかかるトロイくんの『Bloom』1stシングル。おしっこしてたら数秒で出来た曲らしいですが、2018年のポップシーンのハイライトを飾る曲だと思います。美しい佇まいと映像美、新たなポップスターの誕生を祝福する瞬間です。

1. Ariana Grande - thank u, next

2018年の1位を飾るのはこの曲、Ariana Grandeの"thank u, next"です。いわゆる"強い女性像"とは違う、プライベートな破局や恋人の死すらポジティブなエネルギーに変えていくクレバーな強さ。Arianaは自らの人生をしっかり生きていく術を私たちに教えてくれました。そう、合言葉は"thank u, next b**ch🖤"



以上、2018年度シングル20選でした。

今年からApple Musicを本格導入してストリーミングを大いに活用するつもりが、半ばパンク状態に陥るほど音楽的には充実すぎる1年でした。
このストリーミング全盛期では聴きこむ時間が十分に確保できないことを実感し、反省する部分があったり…。なかなか難しいですね。
それは置いといて、ウワサされる2019年のリリース勢もHotな様子。
言いっぱなしのAussie特集ももしかしたらやる……かも。

では改めて

thank u 2018, welcome 2019


2018 Best 20 Albums (10-1位)

Bestアルバムの続きです。
トップ10、ここらへんの順位は適当です。


10. Kali Uchis - Isolation

コロンビア生まれの女性シンガーKali Uchis、念願のデビューアルバムです。ラテンのミュージックスタイルを基盤としながらも、ThundercatやTwo Inch Punch、Kevin Parker(Tame Impala)にDamon Albarn(Gorillaz)といった手練れの数々を惜しげも無く起用した豪華布陣。それでいて、本人の佇まいはあくまで余裕綽々と気怠げなボーカルを貫いていて、今年のうだる暑さにうってつけなレコードでした。Jorja Smithが共演した優雅で麗しいダンスホール"Tyrant"、ラテンフレーヴァーなレゲトン"Nuestro Planeta"でトレンドを押さえつつ、サイケなロックポップで耳の肥えたリスナーの心もガッチリ掴む、まさに会心作ですね。彼女のエロティックなボーカルが映えるレトロなトラックも堪能できて大満足です。



9. Cardi B - Invasion Of Privacy

説明不要の新星フィメールラッパーCardi B、高まる期待に乗せてドロップされた1stアルバムです。今年1年を通してゴシップ界隈でも大活躍した彼女ですが、音楽的にも"客演仕事ではない"大躍進を見せてくれました。希死念慮や鬱をテーマにしたエモラップが一勢力を築く昨今のHip Hopシーンですが、「何を言われようとトラップでやっていく」という発言の通り派手にブチ上げていくCardi Bスタイルはただ頼もしい限り、付いて行くしかないですね。客演陣の力を借りながらも、自身のラップスキルを存分に生かし印象的なフレーズを刻み込む攻撃的なトラックが並び、その勢いを否応なく感じます。一方、"Ring"や"Thru Your Phone"といったトラックではスウィートなメロディを味わうことも出来、引き出しの多さにも驚きました。音楽界でも大きな爪痕を残した彼女、これからがますます楽しみです。



8. SOPHIE - Oil Of Every Pearl's Un-insides

PC Music出身バブルガムベース界の最重要人物SOPHIE、自身名義の2ndアルバム。これまではプロデューサーとして裏方で活躍していた彼女、1stアルバム『PRODUCT』でも自身の姿は伏せたままでした。一転、去年から自身のビジュアルを前面に出し、アーティストSOPHIEとしての活動を本格的にスタートさせています。そのスタイルはエクスペリメンタルなモードとタガが外れたポップセンスを両立した、彼女にしか為し得ないカオスな仕上がり。バキバキな電子音で衝動的なエモーションを駆り立てるエレクトロクラッシュから、ズバ抜けてキャッチー(過ぎるくらい)なポップソング"Immaterial"まで、通して聴くとジェットコースターのようなアルバムです。プロデュース業で垣間見た才能を悠々と飛び越えて行く素晴らしさ。それでもやっぱり、彼女が初めて姿を見せて語りかけたアルバム中最もシンプルな"It's Okay To Cry"には泣かされますね。



7. Robyn - Honey

スウェーデン出身のエレクトロポップの大御所Robyn、8年ぶりのフルアルバムです。前作『Body Talk』はダンスポップの金字塔として名高いですが、長いブランクを経て(コラボ作を挟みますが)リリースされる今作には多大な期待が寄せられました。プロダクションでは前作の主力Klas Åhlundが続投しながらも、エレクトロ・ポップバンドMetronomyのブレーンJoseph Mountが加勢。全9曲40分というコンパクトさですが、メランコリックなダンストラックで統一し、より洗練された音使いにアプローチしています。煌びやかなシンセをバックに、人生の苦楽を胸に踊り明かすポップ・レコード。長年待った甲斐があったと思える傑作です。ハリのあるRobynらしい歌声も健在、いつまでもダンスポップを作り続けていて欲しいアーティストですね。



6. The 1975 - A Brief Inquiry Into Online Relationship

Matthew Healy率いるマンチェスター出身のオルタナティブ・ロックバンド、The 1975の3作目。2年ぶりの今作は「Music For Cars」と題したプロジェクトの1作目という位置付けのようです。前作『I like it ~』ではアンセムポップからアンビエントという振り幅を見せてジャンルレスな実力を見せてくれた彼ら。英ロックとしてカテゴライズされ、もちろんロックらしいトラックもありますが、ボーダーレスなスタイルはより面白い形になっています。冒頭から"Give Yourself A Try"・"TooTime-"のポップトラックでウォームアップし、エモーショナルなニューウェーブ"Love It If We Made It"まで持って行く流れ。さらにデジタルクワイアやR&B/ソウルミュージックに接近したりと、最近の音楽動向にしっかり目を配らせつつ彼ららしいトラックを常に提示できるのは素晴らしいですね。今ドキというか、テン年代の終盤に相応しい作品だと思います。



5. Now, Now - Saved

米ミネアポリスを拠点として活動する2人組インディーロックデュオNow, Nowの3rdアルバム。とは言っても、前作リリース時の2012年より度重なるメンバーの脱退を経験し、ボーカルのAcacia DalagerとドラムスのBradley Haleの2人体制となって初めての作品になります(元ギタリストのJess Abbottは"Tancred"名義で活動中)。まず解散しなくて良かったってコトもありますが、それよりアルバムの内容が素晴らしい仕上がり。透き通るようなAcaciaの歌声を軸に、ユニークでクセのあるポップソングが並びます。シンセや打ち込みが主体のトラックですが、絶妙なオルタナ具合というか安っぽくならずドライなサウンドがとてもカッコイイ。メロウな"SGL"、ファンキーな"MJ"など、ミニマルな音作りとアトモスフェリックな空気感が心地好い、理想的なインディーポップレコードでした。ちょっとサイケなビジュアルも魅力的ですよね。知名度はまだまだ少ないですが、ヒットして欲しいアーティストです。



4. Ariana Grande - Sweetener

アメリカの若きポップスターAriana Grandeの4作目。今までのキャリアを通して、彼女がその歌唱力を生かしつつ、音楽シーンに優れたポップソングを提供してきたことは誰しも認めるところかと思います。特に、前作『Dangerous Woman』ではコンシャスでタイトなアーバンポップへと接近し、Diva不足の昨今において数少ない女性スターとして大いに期待されました。その最中、マンチェスターにおける公演でテロ襲撃の被害を受け、深い悲しみとショックを受けた彼女。同業アーティストの助けとともに、果敢にも音楽の力を胸に立ち上がって制作された1作です。
プロデューサーには、過去作より旧知のMax MartinとIlya Salmanzadehを始めとするポップライター陣、そして新たに2000年代の最重要ライターの1人であるPharrell Williamsを迎えアーバン方面にもビルドアップを果たしています。コレ、おなじみPharrell印のスカスカファンクなんですが、ここ最近でもかなりエキセントリックなディレクションです。が、それに埋もれない巧みなArianaのボーカル。トラック的にもゆとりがあり、アルバムに軽やかさを齎しています。一方、ハイライトとして"breathin"、"no left tears to cry"といったスムースなシンセポップを配置し、前向きなエネルギーを生み出しています。そして2つのジャンルを結ぶ"God is a woman"。自身が「音楽は生命線であり、究極のセラピー」として語る通り、今作は"癒し"と"復活する力"に満ちたアルバムだと思います。ありがとう、Ari❤️



3. Kacey Musgraves - Golden Hour

テキサス生まれのカントリーシンガー、Kacey Musgravesの4作目です。結婚を経て今作ではシンプルに愛の姿を歌おうと考えた彼女は、カントリーの枠を飛び越えロックやポップを片手に携え素晴らしい作品を届けてくれました。バックの演奏にはカントリーの弦楽器を交えつつ、ボコーダーやエフェクトがかかったサイキックなサウンドメイキングで宇宙的なスケールを感じさせます。一方、メロディーは軽やかで耳馴染みのよいシンプルさ。実直で伸びやかなKaceyの歌声とともに郷愁を誘う曲の数々で、何度も聴き返したくなる魅力を湛えています。
まさかのディスコチューン"High Horse"ではポップシーンにアピールしつつ、勘違いヤロウに別れを告げる名アンセム。独りを軽やかに歌う"Lonely Weekend"や伝えられない思いを乗せる"Love Is A Wild Thing"、そして"Space Cowboy"といった恋のアップダウンに寄り添う曲を。"Butterfly"、"Oh, What A World"で愛の素晴らしさを高らかに歌い、ラストの"Rainbow"では苦楽のある人生を肯定する。人々の心に寄り添うこの作品に大いに励まされました。



2. Troye Sivan - Bloom

南アメリカ生まれ、オーストラリアを拠点として活動するアーティストTroye Sivanの2ndアルバム。デビュー作『Blue Neighborhood』から3年越し、待望の新作となりました。Youtuberとしてキャリアをスタートした彼ですが、早くからゲイであることを公言しLGBTQ界隈から支持を集めました。そして『Blue Neighborhood』ではダウナーなアーバンポップを展開し、映像作品とともに結ばれない若き恋の苦悩を表現して一定の評価を得たのでした。
その後、プライベートを共にするパートナーを見つけた彼ですが、久しぶりの新曲"My My My!"では恋のエクスタシーを完璧なポップソングへと変え、その愛を昇華するように堂々とした姿を見せつけました。鮮やかなシンセポップ"Bloom"では「Bops 'Bout Bottoming」(本人談)のフレーズが表す通り、ゲイセックスへ捧げる賛歌。クイアのアーティストとして恐れることのない、新たなTroye Sivanが覚醒した作品となりました。
コレは当然ノロケた内容になるのかと思いきや、フタを開けてみれば、年上との恋における迷いを描いた"Seventeen"や、消えゆく愛への不安を説いた"Plum"など、儚いトラックの数々。永遠には続かない愛や刹那的で死を思わせるところは、前作から地続きかもしれません。しかし、それすらも飲み込んでこの瞬間を謳歌する"Dance To This"など、アルバムを通して彼の人生観が伝わる快作だと思います。同郷のLe Land、カナダからはAllie Xら若手ライターによる、シンプルで瑞々しいトラックも素晴らしいです。来日公演が楽しみですね。



1. Mitski - Be the Cowboy

1位はこちら、ニューヨークで活動する日系アメリカ人Mitski Miyawakiの5作目となるアルバム『Be the Cowboy』。今年の批評家筋でも散々取り上げられているので、ここで特段語るものでもありませんが、既成概念を打ち破りつつ、圧倒的に歪で美しいソングライティングにノックアウトされる1枚です。収録曲の大半が2分足らずというコンパクトさですが、それをモノともしないダイナミックで耳に残る曲展開。サウンドはまっすぐポップであるのに、メロディはどこか不安定で目まぐるしく変わっていく構成。彼女の不安定なアイデンティティや孤独を映した、まさしく異形のロックアルバムだと思います。"エモい"なんて表現が市民権を得ましたが、1曲1曲に乗せられた感情がそのまま歌唱やサウンドにパッケージされていて直に訴えてくるのも凄まじい。丁寧に作られたポップスはもちろん好きですが、ヴォーカルのレイヤーをとことん剥いだという荒削りに様々を曝け出すこのポップロックには衝撃を受けました。冒頭の"Geyser"からしてクライマックスという趣ですが、孤独を抱いて踊り明かす"Nobody"に心からの乾杯を贈りたいと思います。



2018年Bestアルバム、如何でしたでしょうか?
次点でBebe Rexha, Janelle Monae、Kylie Minogue、Let's Eat Grandma, Rebecca and Fionaなどが続きます。
今年は女性アーティストに事欠かず、トップ20でも9割を女性アーティストが占める形となりました。
来年もDivaが活躍する年であることを願っています。
Thank U Sooooo Much!

2018年12月29日土曜日

2018 Best 20 Albums (20-11位)

お久しぶりの更新です。
ありがとう2018年。

去年に引き続き、2018年に聴いたアルバムから20選です。
今年はリリースも多くて大混戦。十分に聴き込めないって方も多かったんじゃないでしょうか?
ちゃんと追えなかった取りこぼしもあるのですが、聴いた作品から絞ってみました。
あと、個人的な都合でEPみたいなもの(曲数・収録時間)は省いています。悪しからず。
例によってちょっとしたコメントと、タイトルなど適当に曲のリンク貼りましたので、お役立て下さいませ。

まずは20~11位まで

20. Indiana - Not Girlfriend Material
「indiana not girlfriend material」の画像検索結果
イギリス出身のエレクトロ・ポップシンガーIndianaことLauren Hensonの2ndアルバム。2014年『No Romeo』から4年越しの2作目ということですが、ブヨブヨ蠢くシンセをベースとしたスタイルは変わらず、Banksをお手本としたような呻くボーカルがセクシーでカッコイイですね。一方、楽曲はかなりポップ化したというか、軽めのノリのトラックもバランス良くあって楽しめました。独りで踊り狂いたくなる"I Like Drinking"、"My Friends Don't Like You"など暗めのダンスソングがツボです。



19. Tash Sultana - Flow State

オーストラリアはメルボルンから、ギターにトランペット・ドラムスなんでもござれのマルチプレイヤーTash Sultanaのデビューアルバムです。ジャンルもマルチというかR&Bを軸としたJazz・はたまたTrip Hopなど、とにかく豊かなバックグラウンドと驚異的な楽器プレイに圧倒される1枚。ヘタなロックバンドよりキレてるギターリフが飛び出したり、かと思えばレイドバックしたメロウ・ジャムを聴かせたりと、多彩なトラックには飽きません。新人にして貫禄のあるライブ演奏の様子は一度見たいものですね。Erykah Baduあたりが好きな人にハマりそうです。



18. Kimbra - Primal Heart

続いてもオセアニア圏から、ニュージーランドの才女Kimbraの4thアルバム『Primal Heart』。彼女の前2作に関しては、ポップネスも感じつつかなりアートポップな領域で勝負してるなという印象でした。しかし今作では、新たにJohn CongletonをExec.プロデューサーに迎え、さらにSkrillexを始めとするヒットメイカーを招聘するなど一気にメジャーシーンまで接近しています。結果として、アクの強さが中和されてユニークなメロディセンスとボーカルに集中できる、良い意味で聴きやすい作品になったと思います。シンセが効いた浮遊感のあるレトロフューチャーなサウンドが素敵。攻めのドープトラック"Top Of The World"からオールディーなポップ"Past Love"など、1曲1曲が個性を放つ意欲作です。



17. Natalie Prass - The Future and The Past

アメリカはナッシュビルのSSW、Natalie Prassの2作目。前作の可憐な作風も好きですが、そこで指摘されたボーカルの弱さをJanet Jacksonのソレとして今作の音楽スタイルの発想にしてしまうクレバーさにはしてやられたって感じですね。肝心のトラックはまさしくオトナのファンク・ポップといった形でとにかく心地好いです。懐かしいようなサウンドですが決して古臭くはならず、洗練されたスタイリッシュな音像で淡々と踊らせる点も好感触。こういう音楽をサラッとやって見せられると、ただカッコいいの一言に尽きますね。



16. Rae Morris - Someone Out There

イギリスのエレクトロ系ポップアーティストの2作目となるアルバム。前作『Unguarded』はAriel Rechtshaidが大半の曲を制作していましたが、この2作目はエレクトロニカ畑のアーティストFryarsがプロデュースを手掛けています。"Atletico (The Only One)"や"Do It"といったキラーチューンを揃えつつ、彼女の歌声が際立つ神秘的な"Reborn"、"Dancing With Character"でアーティスティックな面も存分に発揮しており、聴きどころが満載。キラキラとした電子音で彩られ、キャッチーなアートポップとして成功した作品だと思います。



15. NAO - Saturn

イーストロンドン出身のR&BアーティストNAO、デビュー作から2年ぶりのアルバムです。まず、スタイリッシュなアートワークと宇宙を思わせるコンセプトが美しいですね。1stと同じくGRADESが主体となったプロダクションですが、Mura MasaやStintといった新興プロデューサーが加勢し強力な布陣となっています。前作はオルタナティブな存在感が強かったのですが、今作はドリーミーな成分が増して天上の音楽のような質感。特徴的なヴェルヴェットボイスを存分に生かし、浮遊感のあるエレクトロR&Bを展開しています。ネオソウル風味な"Another Lifetime"や、バウンシーな極上ダンストラック"If You Ever"・"Drive and Disconnect"など、アクセントになる曲もあり充実の1作です。



14. Nicole Millar - Excuse Me

カナダを出自としオーストラリアを活動拠点としているポップアクト、Nicole Millarのデビューアルバムとなる作品です。彼女自体は2016年からEPを発表しており、一部の曲は今作にも収録されています。セツナ系メロディーを基調とした繊細なボーカル、それと対照的にヘビーめなエレクトロ/ダンスを主軸としたパワーポップで、オーバー気味のプロダクションが昨今だと逆に珍しく虜になりました。また、アルバムを通じてオリエンタルな雰囲気がどこかあり、K-Popにも近い感じがします。モロ80年代なアンセムポップ"Gimme A Break"や、四つ打ちサマーチューン"Pink Sundae"といった強力トラックにはやられました。毒っ気を含んだガールズポップ好きにはオススメです。



13. Jorja Smith - Lost & Found

イギリスからは若干21歳、新星R&BシンガーJorja Smithのデビューアルバム。Drakeら大物Hip Hopスターからのフックアップにより注目を集めた彼女ですが、自身の作品では客演に頼らず、ルーツとなるオーセンティックなR&B1本という潔さ。艶のある歌声とともに引き算されたプロダクションが相まって、デビュー作ながらとっても格調高い仕上がりです。ところどころネチっこい歌い方で情念深いリリックを歌い上げるのも良いですね。"Blue Lights"や"Teenage Fantasy"といったキャリア初期からのシリアスなトラックも素晴らしいですが、"February 3rd"、"On Your Own"といった新曲群も気高さを感じる好トラックでした。
今年のサマソニでは凄腕演奏陣を率い、堂々としたパフォーマンスでレコードを上回るモノを見せてくれた彼女、早くも次作に期待が向きます。



12. Tirzah - Devotion

サウスロンドンを拠点とするシンガーTirzahのデビューアルバム。同郷のコラボレーターMICACHUがプロデュースを手掛けており、実験的な要素を含むアーバン・エレクトロアルバムです。鍵盤と打ち込みのビート、そして歌のみと音数は極端に抑えられ、どこまでもミニマルなサウンドメイキング。ほぼビート・ミュージックのようなトラックさえあります。歌が紡ぐメロディーもスキットのようで不定形に近いモノ。まるで掴みどころのない音像なのですが、重低音が生む太いビートとヴェールがかかったような神秘的なボーカルが合わさると不思議な魅力を持って響きます。"Holding On"はアルバムでもキャッチーですが、笑ってしまうくらいにシンプル。「ポップミュージックの最先端」が感じられる面白い1枚だと思います。



11. Cosha - R.I.P Bonzai
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アイルランドはダブリン出身のシンガー、Coshaのデビューアルバム。今年までBonzaiとしてMura Masaとの客演などで活躍していましたが、その名義を捨ててリリースしたのがその名も『R.I.P Bonzai』。前名義ではエキセントリックなエレクトロ・ミュージックで攻めていた彼女ですが、Coshaとしては心機一転、スカにダンスホール、四つ打ちダンストラックまで縦横無尽に行き来してスタイリッシュにキメてくれています。アンニュイな歌声で余裕たっぷりなムード、それでいて強力なトラックが目白押しでめちゃくちゃクール。NAOが客演してたり、Mura Masaが楽曲提供したりという点も注目です。冒頭の"Do You Wanna Dance"からトライバルなダンストラックなんてシビれます。そしてラスト2曲、美しいエレクトロバラード"This Life"からアンセミックなアッパー"Flacko"での締め方もお見事。アルバムを通してよく聴きました。




ここまでオール女性アーティストでしたね。
2018年間ベストアルバム10~1位に続きます。