2018年12月31日月曜日

2018 Best 20 Albums (10-1位)

Bestアルバムの続きです。
トップ10、ここらへんの順位は適当です。


10. Kali Uchis - Isolation

コロンビア生まれの女性シンガーKali Uchis、念願のデビューアルバムです。ラテンのミュージックスタイルを基盤としながらも、ThundercatやTwo Inch Punch、Kevin Parker(Tame Impala)にDamon Albarn(Gorillaz)といった手練れの数々を惜しげも無く起用した豪華布陣。それでいて、本人の佇まいはあくまで余裕綽々と気怠げなボーカルを貫いていて、今年のうだる暑さにうってつけなレコードでした。Jorja Smithが共演した優雅で麗しいダンスホール"Tyrant"、ラテンフレーヴァーなレゲトン"Nuestro Planeta"でトレンドを押さえつつ、サイケなロックポップで耳の肥えたリスナーの心もガッチリ掴む、まさに会心作ですね。彼女のエロティックなボーカルが映えるレトロなトラックも堪能できて大満足です。



9. Cardi B - Invasion Of Privacy

説明不要の新星フィメールラッパーCardi B、高まる期待に乗せてドロップされた1stアルバムです。今年1年を通してゴシップ界隈でも大活躍した彼女ですが、音楽的にも"客演仕事ではない"大躍進を見せてくれました。希死念慮や鬱をテーマにしたエモラップが一勢力を築く昨今のHip Hopシーンですが、「何を言われようとトラップでやっていく」という発言の通り派手にブチ上げていくCardi Bスタイルはただ頼もしい限り、付いて行くしかないですね。客演陣の力を借りながらも、自身のラップスキルを存分に生かし印象的なフレーズを刻み込む攻撃的なトラックが並び、その勢いを否応なく感じます。一方、"Ring"や"Thru Your Phone"といったトラックではスウィートなメロディを味わうことも出来、引き出しの多さにも驚きました。音楽界でも大きな爪痕を残した彼女、これからがますます楽しみです。



8. SOPHIE - Oil Of Every Pearl's Un-insides

PC Music出身バブルガムベース界の最重要人物SOPHIE、自身名義の2ndアルバム。これまではプロデューサーとして裏方で活躍していた彼女、1stアルバム『PRODUCT』でも自身の姿は伏せたままでした。一転、去年から自身のビジュアルを前面に出し、アーティストSOPHIEとしての活動を本格的にスタートさせています。そのスタイルはエクスペリメンタルなモードとタガが外れたポップセンスを両立した、彼女にしか為し得ないカオスな仕上がり。バキバキな電子音で衝動的なエモーションを駆り立てるエレクトロクラッシュから、ズバ抜けてキャッチー(過ぎるくらい)なポップソング"Immaterial"まで、通して聴くとジェットコースターのようなアルバムです。プロデュース業で垣間見た才能を悠々と飛び越えて行く素晴らしさ。それでもやっぱり、彼女が初めて姿を見せて語りかけたアルバム中最もシンプルな"It's Okay To Cry"には泣かされますね。



7. Robyn - Honey

スウェーデン出身のエレクトロポップの大御所Robyn、8年ぶりのフルアルバムです。前作『Body Talk』はダンスポップの金字塔として名高いですが、長いブランクを経て(コラボ作を挟みますが)リリースされる今作には多大な期待が寄せられました。プロダクションでは前作の主力Klas Åhlundが続投しながらも、エレクトロ・ポップバンドMetronomyのブレーンJoseph Mountが加勢。全9曲40分というコンパクトさですが、メランコリックなダンストラックで統一し、より洗練された音使いにアプローチしています。煌びやかなシンセをバックに、人生の苦楽を胸に踊り明かすポップ・レコード。長年待った甲斐があったと思える傑作です。ハリのあるRobynらしい歌声も健在、いつまでもダンスポップを作り続けていて欲しいアーティストですね。



6. The 1975 - A Brief Inquiry Into Online Relationship

Matthew Healy率いるマンチェスター出身のオルタナティブ・ロックバンド、The 1975の3作目。2年ぶりの今作は「Music For Cars」と題したプロジェクトの1作目という位置付けのようです。前作『I like it ~』ではアンセムポップからアンビエントという振り幅を見せてジャンルレスな実力を見せてくれた彼ら。英ロックとしてカテゴライズされ、もちろんロックらしいトラックもありますが、ボーダーレスなスタイルはより面白い形になっています。冒頭から"Give Yourself A Try"・"TooTime-"のポップトラックでウォームアップし、エモーショナルなニューウェーブ"Love It If We Made It"まで持って行く流れ。さらにデジタルクワイアやR&B/ソウルミュージックに接近したりと、最近の音楽動向にしっかり目を配らせつつ彼ららしいトラックを常に提示できるのは素晴らしいですね。今ドキというか、テン年代の終盤に相応しい作品だと思います。



5. Now, Now - Saved

米ミネアポリスを拠点として活動する2人組インディーロックデュオNow, Nowの3rdアルバム。とは言っても、前作リリース時の2012年より度重なるメンバーの脱退を経験し、ボーカルのAcacia DalagerとドラムスのBradley Haleの2人体制となって初めての作品になります(元ギタリストのJess Abbottは"Tancred"名義で活動中)。まず解散しなくて良かったってコトもありますが、それよりアルバムの内容が素晴らしい仕上がり。透き通るようなAcaciaの歌声を軸に、ユニークでクセのあるポップソングが並びます。シンセや打ち込みが主体のトラックですが、絶妙なオルタナ具合というか安っぽくならずドライなサウンドがとてもカッコイイ。メロウな"SGL"、ファンキーな"MJ"など、ミニマルな音作りとアトモスフェリックな空気感が心地好い、理想的なインディーポップレコードでした。ちょっとサイケなビジュアルも魅力的ですよね。知名度はまだまだ少ないですが、ヒットして欲しいアーティストです。



4. Ariana Grande - Sweetener

アメリカの若きポップスターAriana Grandeの4作目。今までのキャリアを通して、彼女がその歌唱力を生かしつつ、音楽シーンに優れたポップソングを提供してきたことは誰しも認めるところかと思います。特に、前作『Dangerous Woman』ではコンシャスでタイトなアーバンポップへと接近し、Diva不足の昨今において数少ない女性スターとして大いに期待されました。その最中、マンチェスターにおける公演でテロ襲撃の被害を受け、深い悲しみとショックを受けた彼女。同業アーティストの助けとともに、果敢にも音楽の力を胸に立ち上がって制作された1作です。
プロデューサーには、過去作より旧知のMax MartinとIlya Salmanzadehを始めとするポップライター陣、そして新たに2000年代の最重要ライターの1人であるPharrell Williamsを迎えアーバン方面にもビルドアップを果たしています。コレ、おなじみPharrell印のスカスカファンクなんですが、ここ最近でもかなりエキセントリックなディレクションです。が、それに埋もれない巧みなArianaのボーカル。トラック的にもゆとりがあり、アルバムに軽やかさを齎しています。一方、ハイライトとして"breathin"、"no left tears to cry"といったスムースなシンセポップを配置し、前向きなエネルギーを生み出しています。そして2つのジャンルを結ぶ"God is a woman"。自身が「音楽は生命線であり、究極のセラピー」として語る通り、今作は"癒し"と"復活する力"に満ちたアルバムだと思います。ありがとう、Ari❤️



3. Kacey Musgraves - Golden Hour

テキサス生まれのカントリーシンガー、Kacey Musgravesの4作目です。結婚を経て今作ではシンプルに愛の姿を歌おうと考えた彼女は、カントリーの枠を飛び越えロックやポップを片手に携え素晴らしい作品を届けてくれました。バックの演奏にはカントリーの弦楽器を交えつつ、ボコーダーやエフェクトがかかったサイキックなサウンドメイキングで宇宙的なスケールを感じさせます。一方、メロディーは軽やかで耳馴染みのよいシンプルさ。実直で伸びやかなKaceyの歌声とともに郷愁を誘う曲の数々で、何度も聴き返したくなる魅力を湛えています。
まさかのディスコチューン"High Horse"ではポップシーンにアピールしつつ、勘違いヤロウに別れを告げる名アンセム。独りを軽やかに歌う"Lonely Weekend"や伝えられない思いを乗せる"Love Is A Wild Thing"、そして"Space Cowboy"といった恋のアップダウンに寄り添う曲を。"Butterfly"、"Oh, What A World"で愛の素晴らしさを高らかに歌い、ラストの"Rainbow"では苦楽のある人生を肯定する。人々の心に寄り添うこの作品に大いに励まされました。



2. Troye Sivan - Bloom

南アメリカ生まれ、オーストラリアを拠点として活動するアーティストTroye Sivanの2ndアルバム。デビュー作『Blue Neighborhood』から3年越し、待望の新作となりました。Youtuberとしてキャリアをスタートした彼ですが、早くからゲイであることを公言しLGBTQ界隈から支持を集めました。そして『Blue Neighborhood』ではダウナーなアーバンポップを展開し、映像作品とともに結ばれない若き恋の苦悩を表現して一定の評価を得たのでした。
その後、プライベートを共にするパートナーを見つけた彼ですが、久しぶりの新曲"My My My!"では恋のエクスタシーを完璧なポップソングへと変え、その愛を昇華するように堂々とした姿を見せつけました。鮮やかなシンセポップ"Bloom"では「Bops 'Bout Bottoming」(本人談)のフレーズが表す通り、ゲイセックスへ捧げる賛歌。クイアのアーティストとして恐れることのない、新たなTroye Sivanが覚醒した作品となりました。
コレは当然ノロケた内容になるのかと思いきや、フタを開けてみれば、年上との恋における迷いを描いた"Seventeen"や、消えゆく愛への不安を説いた"Plum"など、儚いトラックの数々。永遠には続かない愛や刹那的で死を思わせるところは、前作から地続きかもしれません。しかし、それすらも飲み込んでこの瞬間を謳歌する"Dance To This"など、アルバムを通して彼の人生観が伝わる快作だと思います。同郷のLe Land、カナダからはAllie Xら若手ライターによる、シンプルで瑞々しいトラックも素晴らしいです。来日公演が楽しみですね。



1. Mitski - Be the Cowboy

1位はこちら、ニューヨークで活動する日系アメリカ人Mitski Miyawakiの5作目となるアルバム『Be the Cowboy』。今年の批評家筋でも散々取り上げられているので、ここで特段語るものでもありませんが、既成概念を打ち破りつつ、圧倒的に歪で美しいソングライティングにノックアウトされる1枚です。収録曲の大半が2分足らずというコンパクトさですが、それをモノともしないダイナミックで耳に残る曲展開。サウンドはまっすぐポップであるのに、メロディはどこか不安定で目まぐるしく変わっていく構成。彼女の不安定なアイデンティティや孤独を映した、まさしく異形のロックアルバムだと思います。"エモい"なんて表現が市民権を得ましたが、1曲1曲に乗せられた感情がそのまま歌唱やサウンドにパッケージされていて直に訴えてくるのも凄まじい。丁寧に作られたポップスはもちろん好きですが、ヴォーカルのレイヤーをとことん剥いだという荒削りに様々を曝け出すこのポップロックには衝撃を受けました。冒頭の"Geyser"からしてクライマックスという趣ですが、孤独を抱いて踊り明かす"Nobody"に心からの乾杯を贈りたいと思います。



2018年Bestアルバム、如何でしたでしょうか?
次点でBebe Rexha, Janelle Monae、Kylie Minogue、Let's Eat Grandma, Rebecca and Fionaなどが続きます。
今年は女性アーティストに事欠かず、トップ20でも9割を女性アーティストが占める形となりました。
来年もDivaが活躍する年であることを願っています。
Thank U Sooooo Much!

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