2018年12月31日月曜日

2018 Best 20 Singles

2018年に聴いたトラックから20選です。
ひとことコメントだけつけてます。

20. Kendrick Lamar feat. SZA - All The Stars

「Black Panther」のサントラより。プロデューサーのAl Shuxが好きなんですよね。KendrickとSZAのタッグも再びで嬉しいコラボ。

19. G Flip - Killing My Time

オーストラリアから謎の宅録女子G Flipの1曲。天真爛漫なエレクトロポップで素直に良いです。今後に期待。

18 - Rita Ora - Let You Love Me

Girlsに見限られたヲラ様の御勝負曲。そこそこヒットしたけど、そんな事よりライターのNoonie BaoとPC MusicのEASYFUNのタッグが相性抜群。

17. Kris Wu - Like That

元EXOの中華メンバーによるアーバントラック。ドリーミーなサウンドが涼やかで個人的にサマーチューンとしてヒットしました。

16. Tove Styrke - Sway

スウェーデン出身のポップシンガー、3rdアルバムの表題曲。バウンシーなサウンドとヘンテコなヴァースが気持ちいいポップソング。MVも必見。

15. Alina Baraz - Coming To My Senses

官能のスロウ・ジャム。EP『The Colour Of You』は硬質なサウンドとエロティックな雰囲気がマッチしてハマりました。

14. Let's Eat Grandma - Hot Pink

ティーンガールズデュオによるエレクトロバンガー。SOPHIEがプロデュースしてますが、アルバムの他曲もこのクオリティに匹敵するポップチューンぞろいです。

13. Bebe Rexha - Ferrari

ファビュラスなバッド・ビッチ(?)おべべのアルバム冒頭曲。ロッカースタイルも様になってますね。自転車で爆走するときにオススメです。

12. NCT U - Baby Don't Stop

K-PopボーイズグループNCTの派生ユニットから、アーバンなシンセトラック。硬質なビートと呪術的なヴァースが癖になります。Kポ沼に堕ちるきっかけとなった曲。全ては推しがため。

11. Charli XCX feat. Troye Sivan - 1999

ポップスシーンの超重要人物Charli XCX、そしてクイア界の若きスターTroye Sivanのコラボ曲。全力'90sパロディなMVも最高ですが、チップチューンなトラックも至高。早くアルバム出してね!

10. Vera Blue - All The Pretty Girls

豪メルボルンのSSW、Vera Blueの新曲。去年は"Lady Power"というウーマンアンセムをリリースしましたが、お次は女の子を泣かせるKUSO野郎へ捧げる1曲。可憐なポップで好き。

9. Kylie Minogue - Dancing

めでたく50歳のゴールデンジュビリーを迎えたKylie様の新境地。カントリーまでやって「私たちは輝いている」なんて言われたらもう、女神様の仰る通りです。

8. Janelle Monaé - Make Me Feel

プリンス殿下を受け継ぐJanelle嬢のシングル曲。Julia Michaelsがペンを執り、Mattman & Robinプロデュースの黄金タッグ。これ以上なくファンクでポップでカッコイイ、必殺曲だと思います。

7. Empress Of - When I'm With Him

オルタナ・ポップアーティストEmpress Of、待望の2ndアルバムから1stシングル曲。流麗なシンセをベースに切ないメロディを紡ぐキラーチューン。秘める思いを抱く歌詞も素敵です。

6. Allie X - Little Things

カナダ出身のSSW、Allie XのEP『Super Sunset』収録曲。歯切れの良いヴァースと熱を帯びていくコーラス、パワフルなビートが聴いていて気持ちい良い。彼女らしい切なさ全開のメロディもツボです。

5. Kim Petras - Heart To Break

ドイツ出身のポップ・シンガーKim Petrasのディスコな玉砕覚悟アンセム。Arianaライクな張り上げ歌唱もお見事ですが、2018年のポップソングでも最高峰のポップネス。フルアルバムが待ち切れない!

4. Kacey Musgraves - High Horse

Kacey Musgraves渾身のディスコ・チューン。御本人もノリノリなのがイイですね。洗練されたプロダクションと秀逸なメロディにノックアウト。あなたもきっと口ずさむハズ、"はぁあぁほおぉ〜 hmm〜〜♫"

3. Cardi B feat. Bad Bunny and J Balvin - I Like That


絶好調のCardi Bによる、凶悪なまでに強力なブチアゲトラップ。ラテンのムードも後押しして2018年イチのアゲっぷりを記録。今年は彼女が1年にわたってシーンを湧かせてくれました。ママCardiにも期待したいです。

2. Troye Sivan - My My My!


SNS芸に磨きがかかるトロイくんの『Bloom』1stシングル。おしっこしてたら数秒で出来た曲らしいですが、2018年のポップシーンのハイライトを飾る曲だと思います。美しい佇まいと映像美、新たなポップスターの誕生を祝福する瞬間です。

1. Ariana Grande - thank u, next

2018年の1位を飾るのはこの曲、Ariana Grandeの"thank u, next"です。いわゆる"強い女性像"とは違う、プライベートな破局や恋人の死すらポジティブなエネルギーに変えていくクレバーな強さ。Arianaは自らの人生をしっかり生きていく術を私たちに教えてくれました。そう、合言葉は"thank u, next b**ch🖤"



以上、2018年度シングル20選でした。

今年からApple Musicを本格導入してストリーミングを大いに活用するつもりが、半ばパンク状態に陥るほど音楽的には充実すぎる1年でした。
このストリーミング全盛期では聴きこむ時間が十分に確保できないことを実感し、反省する部分があったり…。なかなか難しいですね。
それは置いといて、ウワサされる2019年のリリース勢もHotな様子。
言いっぱなしのAussie特集ももしかしたらやる……かも。

では改めて

thank u 2018, welcome 2019


2018 Best 20 Albums (10-1位)

Bestアルバムの続きです。
トップ10、ここらへんの順位は適当です。


10. Kali Uchis - Isolation

コロンビア生まれの女性シンガーKali Uchis、念願のデビューアルバムです。ラテンのミュージックスタイルを基盤としながらも、ThundercatやTwo Inch Punch、Kevin Parker(Tame Impala)にDamon Albarn(Gorillaz)といった手練れの数々を惜しげも無く起用した豪華布陣。それでいて、本人の佇まいはあくまで余裕綽々と気怠げなボーカルを貫いていて、今年のうだる暑さにうってつけなレコードでした。Jorja Smithが共演した優雅で麗しいダンスホール"Tyrant"、ラテンフレーヴァーなレゲトン"Nuestro Planeta"でトレンドを押さえつつ、サイケなロックポップで耳の肥えたリスナーの心もガッチリ掴む、まさに会心作ですね。彼女のエロティックなボーカルが映えるレトロなトラックも堪能できて大満足です。



9. Cardi B - Invasion Of Privacy

説明不要の新星フィメールラッパーCardi B、高まる期待に乗せてドロップされた1stアルバムです。今年1年を通してゴシップ界隈でも大活躍した彼女ですが、音楽的にも"客演仕事ではない"大躍進を見せてくれました。希死念慮や鬱をテーマにしたエモラップが一勢力を築く昨今のHip Hopシーンですが、「何を言われようとトラップでやっていく」という発言の通り派手にブチ上げていくCardi Bスタイルはただ頼もしい限り、付いて行くしかないですね。客演陣の力を借りながらも、自身のラップスキルを存分に生かし印象的なフレーズを刻み込む攻撃的なトラックが並び、その勢いを否応なく感じます。一方、"Ring"や"Thru Your Phone"といったトラックではスウィートなメロディを味わうことも出来、引き出しの多さにも驚きました。音楽界でも大きな爪痕を残した彼女、これからがますます楽しみです。



8. SOPHIE - Oil Of Every Pearl's Un-insides

PC Music出身バブルガムベース界の最重要人物SOPHIE、自身名義の2ndアルバム。これまではプロデューサーとして裏方で活躍していた彼女、1stアルバム『PRODUCT』でも自身の姿は伏せたままでした。一転、去年から自身のビジュアルを前面に出し、アーティストSOPHIEとしての活動を本格的にスタートさせています。そのスタイルはエクスペリメンタルなモードとタガが外れたポップセンスを両立した、彼女にしか為し得ないカオスな仕上がり。バキバキな電子音で衝動的なエモーションを駆り立てるエレクトロクラッシュから、ズバ抜けてキャッチー(過ぎるくらい)なポップソング"Immaterial"まで、通して聴くとジェットコースターのようなアルバムです。プロデュース業で垣間見た才能を悠々と飛び越えて行く素晴らしさ。それでもやっぱり、彼女が初めて姿を見せて語りかけたアルバム中最もシンプルな"It's Okay To Cry"には泣かされますね。



7. Robyn - Honey

スウェーデン出身のエレクトロポップの大御所Robyn、8年ぶりのフルアルバムです。前作『Body Talk』はダンスポップの金字塔として名高いですが、長いブランクを経て(コラボ作を挟みますが)リリースされる今作には多大な期待が寄せられました。プロダクションでは前作の主力Klas Åhlundが続投しながらも、エレクトロ・ポップバンドMetronomyのブレーンJoseph Mountが加勢。全9曲40分というコンパクトさですが、メランコリックなダンストラックで統一し、より洗練された音使いにアプローチしています。煌びやかなシンセをバックに、人生の苦楽を胸に踊り明かすポップ・レコード。長年待った甲斐があったと思える傑作です。ハリのあるRobynらしい歌声も健在、いつまでもダンスポップを作り続けていて欲しいアーティストですね。



6. The 1975 - A Brief Inquiry Into Online Relationship

Matthew Healy率いるマンチェスター出身のオルタナティブ・ロックバンド、The 1975の3作目。2年ぶりの今作は「Music For Cars」と題したプロジェクトの1作目という位置付けのようです。前作『I like it ~』ではアンセムポップからアンビエントという振り幅を見せてジャンルレスな実力を見せてくれた彼ら。英ロックとしてカテゴライズされ、もちろんロックらしいトラックもありますが、ボーダーレスなスタイルはより面白い形になっています。冒頭から"Give Yourself A Try"・"TooTime-"のポップトラックでウォームアップし、エモーショナルなニューウェーブ"Love It If We Made It"まで持って行く流れ。さらにデジタルクワイアやR&B/ソウルミュージックに接近したりと、最近の音楽動向にしっかり目を配らせつつ彼ららしいトラックを常に提示できるのは素晴らしいですね。今ドキというか、テン年代の終盤に相応しい作品だと思います。



5. Now, Now - Saved

米ミネアポリスを拠点として活動する2人組インディーロックデュオNow, Nowの3rdアルバム。とは言っても、前作リリース時の2012年より度重なるメンバーの脱退を経験し、ボーカルのAcacia DalagerとドラムスのBradley Haleの2人体制となって初めての作品になります(元ギタリストのJess Abbottは"Tancred"名義で活動中)。まず解散しなくて良かったってコトもありますが、それよりアルバムの内容が素晴らしい仕上がり。透き通るようなAcaciaの歌声を軸に、ユニークでクセのあるポップソングが並びます。シンセや打ち込みが主体のトラックですが、絶妙なオルタナ具合というか安っぽくならずドライなサウンドがとてもカッコイイ。メロウな"SGL"、ファンキーな"MJ"など、ミニマルな音作りとアトモスフェリックな空気感が心地好い、理想的なインディーポップレコードでした。ちょっとサイケなビジュアルも魅力的ですよね。知名度はまだまだ少ないですが、ヒットして欲しいアーティストです。



4. Ariana Grande - Sweetener

アメリカの若きポップスターAriana Grandeの4作目。今までのキャリアを通して、彼女がその歌唱力を生かしつつ、音楽シーンに優れたポップソングを提供してきたことは誰しも認めるところかと思います。特に、前作『Dangerous Woman』ではコンシャスでタイトなアーバンポップへと接近し、Diva不足の昨今において数少ない女性スターとして大いに期待されました。その最中、マンチェスターにおける公演でテロ襲撃の被害を受け、深い悲しみとショックを受けた彼女。同業アーティストの助けとともに、果敢にも音楽の力を胸に立ち上がって制作された1作です。
プロデューサーには、過去作より旧知のMax MartinとIlya Salmanzadehを始めとするポップライター陣、そして新たに2000年代の最重要ライターの1人であるPharrell Williamsを迎えアーバン方面にもビルドアップを果たしています。コレ、おなじみPharrell印のスカスカファンクなんですが、ここ最近でもかなりエキセントリックなディレクションです。が、それに埋もれない巧みなArianaのボーカル。トラック的にもゆとりがあり、アルバムに軽やかさを齎しています。一方、ハイライトとして"breathin"、"no left tears to cry"といったスムースなシンセポップを配置し、前向きなエネルギーを生み出しています。そして2つのジャンルを結ぶ"God is a woman"。自身が「音楽は生命線であり、究極のセラピー」として語る通り、今作は"癒し"と"復活する力"に満ちたアルバムだと思います。ありがとう、Ari❤️



3. Kacey Musgraves - Golden Hour

テキサス生まれのカントリーシンガー、Kacey Musgravesの4作目です。結婚を経て今作ではシンプルに愛の姿を歌おうと考えた彼女は、カントリーの枠を飛び越えロックやポップを片手に携え素晴らしい作品を届けてくれました。バックの演奏にはカントリーの弦楽器を交えつつ、ボコーダーやエフェクトがかかったサイキックなサウンドメイキングで宇宙的なスケールを感じさせます。一方、メロディーは軽やかで耳馴染みのよいシンプルさ。実直で伸びやかなKaceyの歌声とともに郷愁を誘う曲の数々で、何度も聴き返したくなる魅力を湛えています。
まさかのディスコチューン"High Horse"ではポップシーンにアピールしつつ、勘違いヤロウに別れを告げる名アンセム。独りを軽やかに歌う"Lonely Weekend"や伝えられない思いを乗せる"Love Is A Wild Thing"、そして"Space Cowboy"といった恋のアップダウンに寄り添う曲を。"Butterfly"、"Oh, What A World"で愛の素晴らしさを高らかに歌い、ラストの"Rainbow"では苦楽のある人生を肯定する。人々の心に寄り添うこの作品に大いに励まされました。



2. Troye Sivan - Bloom

南アメリカ生まれ、オーストラリアを拠点として活動するアーティストTroye Sivanの2ndアルバム。デビュー作『Blue Neighborhood』から3年越し、待望の新作となりました。Youtuberとしてキャリアをスタートした彼ですが、早くからゲイであることを公言しLGBTQ界隈から支持を集めました。そして『Blue Neighborhood』ではダウナーなアーバンポップを展開し、映像作品とともに結ばれない若き恋の苦悩を表現して一定の評価を得たのでした。
その後、プライベートを共にするパートナーを見つけた彼ですが、久しぶりの新曲"My My My!"では恋のエクスタシーを完璧なポップソングへと変え、その愛を昇華するように堂々とした姿を見せつけました。鮮やかなシンセポップ"Bloom"では「Bops 'Bout Bottoming」(本人談)のフレーズが表す通り、ゲイセックスへ捧げる賛歌。クイアのアーティストとして恐れることのない、新たなTroye Sivanが覚醒した作品となりました。
コレは当然ノロケた内容になるのかと思いきや、フタを開けてみれば、年上との恋における迷いを描いた"Seventeen"や、消えゆく愛への不安を説いた"Plum"など、儚いトラックの数々。永遠には続かない愛や刹那的で死を思わせるところは、前作から地続きかもしれません。しかし、それすらも飲み込んでこの瞬間を謳歌する"Dance To This"など、アルバムを通して彼の人生観が伝わる快作だと思います。同郷のLe Land、カナダからはAllie Xら若手ライターによる、シンプルで瑞々しいトラックも素晴らしいです。来日公演が楽しみですね。



1. Mitski - Be the Cowboy

1位はこちら、ニューヨークで活動する日系アメリカ人Mitski Miyawakiの5作目となるアルバム『Be the Cowboy』。今年の批評家筋でも散々取り上げられているので、ここで特段語るものでもありませんが、既成概念を打ち破りつつ、圧倒的に歪で美しいソングライティングにノックアウトされる1枚です。収録曲の大半が2分足らずというコンパクトさですが、それをモノともしないダイナミックで耳に残る曲展開。サウンドはまっすぐポップであるのに、メロディはどこか不安定で目まぐるしく変わっていく構成。彼女の不安定なアイデンティティや孤独を映した、まさしく異形のロックアルバムだと思います。"エモい"なんて表現が市民権を得ましたが、1曲1曲に乗せられた感情がそのまま歌唱やサウンドにパッケージされていて直に訴えてくるのも凄まじい。丁寧に作られたポップスはもちろん好きですが、ヴォーカルのレイヤーをとことん剥いだという荒削りに様々を曝け出すこのポップロックには衝撃を受けました。冒頭の"Geyser"からしてクライマックスという趣ですが、孤独を抱いて踊り明かす"Nobody"に心からの乾杯を贈りたいと思います。



2018年Bestアルバム、如何でしたでしょうか?
次点でBebe Rexha, Janelle Monae、Kylie Minogue、Let's Eat Grandma, Rebecca and Fionaなどが続きます。
今年は女性アーティストに事欠かず、トップ20でも9割を女性アーティストが占める形となりました。
来年もDivaが活躍する年であることを願っています。
Thank U Sooooo Much!

2018年12月29日土曜日

2018 Best 20 Albums (20-11位)

お久しぶりの更新です。
ありがとう2018年。

去年に引き続き、2018年に聴いたアルバムから20選です。
今年はリリースも多くて大混戦。十分に聴き込めないって方も多かったんじゃないでしょうか?
ちゃんと追えなかった取りこぼしもあるのですが、聴いた作品から絞ってみました。
あと、個人的な都合でEPみたいなもの(曲数・収録時間)は省いています。悪しからず。
例によってちょっとしたコメントと、タイトルなど適当に曲のリンク貼りましたので、お役立て下さいませ。

まずは20~11位まで

20. Indiana - Not Girlfriend Material
「indiana not girlfriend material」の画像検索結果
イギリス出身のエレクトロ・ポップシンガーIndianaことLauren Hensonの2ndアルバム。2014年『No Romeo』から4年越しの2作目ということですが、ブヨブヨ蠢くシンセをベースとしたスタイルは変わらず、Banksをお手本としたような呻くボーカルがセクシーでカッコイイですね。一方、楽曲はかなりポップ化したというか、軽めのノリのトラックもバランス良くあって楽しめました。独りで踊り狂いたくなる"I Like Drinking"、"My Friends Don't Like You"など暗めのダンスソングがツボです。



19. Tash Sultana - Flow State

オーストラリアはメルボルンから、ギターにトランペット・ドラムスなんでもござれのマルチプレイヤーTash Sultanaのデビューアルバムです。ジャンルもマルチというかR&Bを軸としたJazz・はたまたTrip Hopなど、とにかく豊かなバックグラウンドと驚異的な楽器プレイに圧倒される1枚。ヘタなロックバンドよりキレてるギターリフが飛び出したり、かと思えばレイドバックしたメロウ・ジャムを聴かせたりと、多彩なトラックには飽きません。新人にして貫禄のあるライブ演奏の様子は一度見たいものですね。Erykah Baduあたりが好きな人にハマりそうです。



18. Kimbra - Primal Heart

続いてもオセアニア圏から、ニュージーランドの才女Kimbraの4thアルバム『Primal Heart』。彼女の前2作に関しては、ポップネスも感じつつかなりアートポップな領域で勝負してるなという印象でした。しかし今作では、新たにJohn CongletonをExec.プロデューサーに迎え、さらにSkrillexを始めとするヒットメイカーを招聘するなど一気にメジャーシーンまで接近しています。結果として、アクの強さが中和されてユニークなメロディセンスとボーカルに集中できる、良い意味で聴きやすい作品になったと思います。シンセが効いた浮遊感のあるレトロフューチャーなサウンドが素敵。攻めのドープトラック"Top Of The World"からオールディーなポップ"Past Love"など、1曲1曲が個性を放つ意欲作です。



17. Natalie Prass - The Future and The Past

アメリカはナッシュビルのSSW、Natalie Prassの2作目。前作の可憐な作風も好きですが、そこで指摘されたボーカルの弱さをJanet Jacksonのソレとして今作の音楽スタイルの発想にしてしまうクレバーさにはしてやられたって感じですね。肝心のトラックはまさしくオトナのファンク・ポップといった形でとにかく心地好いです。懐かしいようなサウンドですが決して古臭くはならず、洗練されたスタイリッシュな音像で淡々と踊らせる点も好感触。こういう音楽をサラッとやって見せられると、ただカッコいいの一言に尽きますね。



16. Rae Morris - Someone Out There

イギリスのエレクトロ系ポップアーティストの2作目となるアルバム。前作『Unguarded』はAriel Rechtshaidが大半の曲を制作していましたが、この2作目はエレクトロニカ畑のアーティストFryarsがプロデュースを手掛けています。"Atletico (The Only One)"や"Do It"といったキラーチューンを揃えつつ、彼女の歌声が際立つ神秘的な"Reborn"、"Dancing With Character"でアーティスティックな面も存分に発揮しており、聴きどころが満載。キラキラとした電子音で彩られ、キャッチーなアートポップとして成功した作品だと思います。



15. NAO - Saturn

イーストロンドン出身のR&BアーティストNAO、デビュー作から2年ぶりのアルバムです。まず、スタイリッシュなアートワークと宇宙を思わせるコンセプトが美しいですね。1stと同じくGRADESが主体となったプロダクションですが、Mura MasaやStintといった新興プロデューサーが加勢し強力な布陣となっています。前作はオルタナティブな存在感が強かったのですが、今作はドリーミーな成分が増して天上の音楽のような質感。特徴的なヴェルヴェットボイスを存分に生かし、浮遊感のあるエレクトロR&Bを展開しています。ネオソウル風味な"Another Lifetime"や、バウンシーな極上ダンストラック"If You Ever"・"Drive and Disconnect"など、アクセントになる曲もあり充実の1作です。



14. Nicole Millar - Excuse Me

カナダを出自としオーストラリアを活動拠点としているポップアクト、Nicole Millarのデビューアルバムとなる作品です。彼女自体は2016年からEPを発表しており、一部の曲は今作にも収録されています。セツナ系メロディーを基調とした繊細なボーカル、それと対照的にヘビーめなエレクトロ/ダンスを主軸としたパワーポップで、オーバー気味のプロダクションが昨今だと逆に珍しく虜になりました。また、アルバムを通じてオリエンタルな雰囲気がどこかあり、K-Popにも近い感じがします。モロ80年代なアンセムポップ"Gimme A Break"や、四つ打ちサマーチューン"Pink Sundae"といった強力トラックにはやられました。毒っ気を含んだガールズポップ好きにはオススメです。



13. Jorja Smith - Lost & Found

イギリスからは若干21歳、新星R&BシンガーJorja Smithのデビューアルバム。Drakeら大物Hip Hopスターからのフックアップにより注目を集めた彼女ですが、自身の作品では客演に頼らず、ルーツとなるオーセンティックなR&B1本という潔さ。艶のある歌声とともに引き算されたプロダクションが相まって、デビュー作ながらとっても格調高い仕上がりです。ところどころネチっこい歌い方で情念深いリリックを歌い上げるのも良いですね。"Blue Lights"や"Teenage Fantasy"といったキャリア初期からのシリアスなトラックも素晴らしいですが、"February 3rd"、"On Your Own"といった新曲群も気高さを感じる好トラックでした。
今年のサマソニでは凄腕演奏陣を率い、堂々としたパフォーマンスでレコードを上回るモノを見せてくれた彼女、早くも次作に期待が向きます。



12. Tirzah - Devotion

サウスロンドンを拠点とするシンガーTirzahのデビューアルバム。同郷のコラボレーターMICACHUがプロデュースを手掛けており、実験的な要素を含むアーバン・エレクトロアルバムです。鍵盤と打ち込みのビート、そして歌のみと音数は極端に抑えられ、どこまでもミニマルなサウンドメイキング。ほぼビート・ミュージックのようなトラックさえあります。歌が紡ぐメロディーもスキットのようで不定形に近いモノ。まるで掴みどころのない音像なのですが、重低音が生む太いビートとヴェールがかかったような神秘的なボーカルが合わさると不思議な魅力を持って響きます。"Holding On"はアルバムでもキャッチーですが、笑ってしまうくらいにシンプル。「ポップミュージックの最先端」が感じられる面白い1枚だと思います。



11. Cosha - R.I.P Bonzai
「cosha rip bonzai」の画像検索結果
アイルランドはダブリン出身のシンガー、Coshaのデビューアルバム。今年までBonzaiとしてMura Masaとの客演などで活躍していましたが、その名義を捨ててリリースしたのがその名も『R.I.P Bonzai』。前名義ではエキセントリックなエレクトロ・ミュージックで攻めていた彼女ですが、Coshaとしては心機一転、スカにダンスホール、四つ打ちダンストラックまで縦横無尽に行き来してスタイリッシュにキメてくれています。アンニュイな歌声で余裕たっぷりなムード、それでいて強力なトラックが目白押しでめちゃくちゃクール。NAOが客演してたり、Mura Masaが楽曲提供したりという点も注目です。冒頭の"Do You Wanna Dance"からトライバルなダンストラックなんてシビれます。そしてラスト2曲、美しいエレクトロバラード"This Life"からアンセミックなアッパー"Flacko"での締め方もお見事。アルバムを通してよく聴きました。




ここまでオール女性アーティストでしたね。
2018年間ベストアルバム10~1位に続きます。

2018年2月11日日曜日

【Aussieアーティスト紹介】Flume

こんにちは。
年間ベスト用に立ち上げたブログですが、折角なのでコンテンツを増やしたいと思います。
虚しくなったり飽きてしまったらそれまでですが、おつき合い下さいませ。


ポップミュージックシーンを観察していると、局地的に優れたアーティストを輩出してくる国や地域がありますよね。
有名どころで言うと、カナダからJustin Bieber / Carly Rae Jepsen / Grimes など。それに止まらず、Tegan & Sara、Dragonette、Allie Xら若手中堅アーティストも続々輩出しています。

それからなんと言ってもスウェーデン!!Robyn / Tove Lo / Noonie Bao / Zara Larssonら、世界のポップシーンに名だたるアーティストを多く送り出してきました。巨匠プロデューサーのMax Martinもスウェーデンの方ですね。あのABBAもそう、いつの時代もシンセポップを牽引するのはスウェーデンなんです。

この世界にはポップ名産地がいくつもある…。
では、次なる注目エリアはどこだ!

オーストラリアだ!!


ということで、オーストラリア/ニュージーランドを拠点とするアーティストを独断と偏見で紹介する、Aussieアーティスト特集です。


初回はFlume
なぜか?
メジャーシーンで活躍してるだけでなく、オーストラリア勢と積極的に共演していてAussieアーティスト発掘のきっかけを作ってくれたからです。あと見た目がカワイイ。



Flume、本名 Harley Stretenはシドニー出身の26歳。ステージネームのFlumeは、Bon Iverの曲名からとったそう。
ラップトップで作っていたトラックを新人アーティスト発掘コンペに応募したところ、見事入賞。オーストラリアのレコードレーベル"Future Classic"と契約後、2012年にはデビューアルバム『Flume』をリリースします。


伸びやかなシンセベースを基軸としながら、メランコリックなメロディーと、BPM落とし目なビートでドリーミーなエレクトロレコードといった仕上がり。どことなく温もりのあるサウンドが良いです。
"Sleepless"や"Insane"など、深夜に聴きたくなる宅録ハウストラックがヒット。浮遊感が心地よいです。またゲストには、Chet Fakerら同郷の仲間たちを多数起用しており、まさしく純オーストラリア産レコードでデビューを飾りました。

さらに、Delux盤には自身のリミックスワークも収録。

Disclosureの"You & Me"では原曲を大胆に解体しながら、Flume節が炸裂する名リミックスを披露。(美しいイメージビデオ!)


Hermitudeの"Hyperparadise"も超絶バンガートラックとして再構成しています。


この辺のリミックスでも手腕を存分に発揮しており、Flumeならではのサウンドが抜群にカッコいいです。
ご近所ニュージーランドのスター、Lordeの"Tennis Court"だってこの通り。

デビューアルバムは界隈で高評価を受け、Mom + Pop Musicと契約して北米にも進出。

そして2016年には、2ndアルバム『Skin』を完成させます。
アルバムのアートワークにはオーストラリア出身のデザイナーアーティストJonathan Zawadaを起用。花や植物をモチーフとした神秘的なイメージが目を牽きます。


音楽面も大きく変化を遂げました。PC music勢のバブルガムベースにも接近したような、変則的な近未来サウンドで独自のフューチャーベース路線を展開。ユニークなビートとウワモノ、それに絡みあうシンセが非常にカラフルです。
ヒップホップの要素もかなり強めており、Vince StaplesやVic Mensaらラッパーを迎えドープなトラックが目立ちます。また、BeckやAlunageorgeなど、豪華客演陣が並びます。

オーストラリアで見事1位、BillboardでもDance/Electronic Songsで3位と、Flume最大のヒットとなった"Never Be Like You"。Diploの秘蔵っ子シンガーKaiをボーカルに迎え、浮遊感のあるメロディラインと大胆なビート使いがハマります。サイケデリックなねじれMVも面白いです。


Tove Loを迎えた"Say It"も、緩急つけたシンセが引っ張る開放的な展開が素晴らしい。Tove Loお得意の切なげなメロディもマッチしてエモさ全開です。


ライブパフォーマンスやビジュアルにも力を入れていて、光るバーで出来たキューブを組み合わせた機能的ながらフォトジェニックなDJセットは見ものです。Flumeのライブだと生で演奏してますね。真ん中の隅の位置に立ち、DJテーブルでプレイ、そして端のデジタルドラムを叩きまくります。

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また『Skin』アートワークを使ったアパレルも展開しています。花柄でゆめカワFlume。


そして、『Skin』が2017 Best Dance/Electronic AlubumとしてGrammyの栄光に輝きました。おめでとう!


また、『Skin』本編には未収録のアウトテイクや追加曲を、アルバムヒット記念としてEPでリリースしています。→『Skin Companion EPⅠ/Ⅱ
こちらも軒並み高クオリティなトラックが揃っており必聴です。Pusha T、Glass Animalsらが参加。
オススメは派手めなダンストラックのTRUSTHyperrealあたり。アガります。

世界に進出した後も、Aussieアーティストを招いた音楽制作を続けています。
ランニングマンチャレンジで流行った"My Boo"には、いつもの面子に加えて、Vera BlueやNgaiireらオーストラリア拠点のシンガーを率いて大胆アレンジカバーを披露。



最近ではトラックメーカーとしても躍進中です。

2016年、Alunageorgeの2ndアルバムではタイトルトラック"I Remember"を提供。スムースなミッドエレクトロでとても印象的。

また、Lordeの2nd『Melodrama』ではかつてのリミックス越しに共演を果たし、"The Louvre"(ド名曲!)を手がけています。2017年最高のポップレコードにアクセントを添えていてこれまた素晴らしい!

また、『Skin』で客演していたVince Staplesには、本人のアルバム『Big Fish Theory』で、レーベルメイトのSOPHIEと"Yeah Right"を共同プロデュース。Kučkaちゃんをお伴に、Kendrick Lamar(!)を招聘した激ヤバ布陣でトラックを制作しています。

客演曲だけでなく、知らないオーストラリアの共演陣を追ってみたりして中々楽しい感じなので、その辺も合わせてご紹介出来ればと思います。
以上、これからの活動もますます楽しみな"Flume"の紹介でした。

余談ですが、アザープロジェクトとして、同郷のEmoh Insteadと"What So Not"名義でDJデュオを結成し活動していましたが、こちらは音楽性の不一致から脱退。
片割れとなったWhat So Notですが、そのまま現在も制作をしていてデビューアルバムがこの春リリースです。『Not All The Beautiful Things』こちらも要チェック!

ということで、第1回【Aussieアーティスト紹介】のコーナーでした。
ここまで長々とありがとうございました!

2018年1月4日木曜日

2017 Best 20 Singles

2017年に聴いたトラックから20選です。
ひとことコメントだけつけてます。

20. Bebe Rexha - F.F.F. (feat. G-Eazy)
"Me, Myself & I"と対となる曲。なぜこっちはヒットしなかったのか。一方のG-Eazyは"カレと私"で絶好調です。

19. Julia Michaels - Issues
現行ポップシーンの担い手の1人Juliaさん。少々トリッキーな曲ですが、癖になる歌い方でクリティカルヒット。

18. Betsy - Lost & Found
歌い出しを聴いたらもう優勝。気持ち良いアンセムっぷりで、反則級に素晴らしい歌声がよく映えます。

17. Kehlani - Honey
アルバムの攻めた曲調も好きだけど、アコギ1本でシンプルなこの曲は狂おしいほど切なくて素敵。寒い季節に沁み入る名曲。

16. Katy Perry - Bon Appétit
狂気のシンセポップチューン。不遇の1曲ですが、カッコいいリフとボコボコしたビート、Migosのverseもキマってて最高。飽きない!

15. George Maple - Hero
2017年の個人的アンセム。ダイナミックなヴォーカルといい、往年のダンスディーヴァ然とした佇まいに惚れました。

14. SOPHIE - It's Okay To Cry
覚醒したSOPHIEさんによる、とても繊細で美しい1曲。全力で泣かせにかかってきて誰も敵いません。

13. Cardi B - Bodak Yellow 
第一印象は「昔のJessie Jみたい…」です。守備範囲外だけど、女性アーティスト/ラッパーの急先鋒として知り、そのままハマりました。

12. Rita Ora - Anywhere
2017年、大躍進を為されたリタヲラ様の神聖な1曲。郷愁を誘う旋律とユニークなシンセベースが尊い。待望の第2アルバムに期待を寄せてこの位置です。オゥッ!

11. Allie X - Casanova
暗黒ポップなEPの1曲。無機質なんだけどとってもキャッチー、ディープハウスっぽいブレイクがめちゃくちゃカッコいい。カッサノォヴァーーー!!で昇天。

10. Lorde - Green Light
新生Lordeちゃん渾身の1曲。静謐に始まり、開放感にあふれた怒涛の曲展開。まっすぐなベクトルで、問答無用にリスナーを踊らせるポップソングに乾杯!

9. Dua Lipa - New Rules
飛び道具的な1曲と思いきや大ヒットしましたね。そして不思議さが癖になる名MV。「ルールその1」から始まってガラージ風ブレイクの展開が非常に小気味良いです。

8. Mollie King - Hair Down
2017年瞬間最大風速を観測したブチアゲソング。久々に目紛しいまでのXenomania節を耳にして、血と肉が湧き踊りました。コレよコレ。

7. Logic - 1-800-273-8255
涙腺崩壊ソング。この美しい1曲が聴けてホント良かったです。シリアスなMVも素晴らしいですが、ここはEpicだったVMAのライブバージョンをどうぞ。

6. Tove Lo - Disco Tits
ディスコ乳って何だよって感じですが、クールなディスコサウンドにサイケなコーラスとエモいヴァースが乗っかってカッコ良すぎる仕上がりです。爆笑MVも必見。

5. Rae Morris - Do It
壮大な"Reborn"も大好きなんですが、癒し系のコチラをチョイス。牧歌的なメロディとRaeちゃんのフワッとした歌声がマッチして非常にポップな1曲。全く飽きません。アルバムが早く聴きたい!

4. Carly Rae Jepsen - Cut To The Feeling
ポップ度が120%まで振り切れた一線越えソング。最近では珍しいくらいの直球ポップソングでド肝抜かれましたが、非の打ち所がないピュアさ。Carly恐るべしと感じた1曲でした。

3. Lana Del Rey - Love
おラナの新境地。人生の頌歌というか、抱擁を交わすような至福の時。"Love"と"Young and Beautiful"、この不朽の名曲2つを生んでくれてありがとうと言いたい。もうこの際、これまでの来日キャンセルも許します。

2. Charli XCX - Boys
PC music勢をお供に、ミュージックシーンにカチ込むCharli XCXの勝負曲もといヲキャマアンセム。豪華男性陣が出演のMVも美味しいですが、今までになく洗練されたポップソングだと思います。あなたはどの殿方がお好き?

1. Tove Styrke - Mistakes
Loじゃない方のToveさん、Styr子ちゃんの2017年2発目のシングル。『Kiddo』から引続きヘンテコポップという感じですが、よりポップ強度を増した1曲。疾走感あるverseから変則ブレイクのギャップ、100点の舌足らずなヴォーカルと、Tove Styrkeの金字塔だと思います。ネクストアルバムに超期待!!


以上、2017年度シングル20選でした。

Logic以外すべて女性アーティストでしたね。チャート上でも女性アーティスト、DIVAのお歴々が再び返り咲くことを祈念致します。
2018年も楽しみなアーティストが目白押し、たくさん聴けると思うとワクワクします。
お相手ありがとうございました。


2018年1月3日水曜日

2017 Best 20 Albums

明けましておめでとうございます。よろしく2018年。

2017年に聴いたアルバムから20選です。
順位は完全に独断と偏見。
良さを語るボキャブラリが少ないのはお許しください。
タイトルとかに適当に曲のリンク貼ったので、お役立て下さいませ。


20. Gordi - Reservoir

オーストラリア出身のオルタナ女子GordiことSophie Paytenの1stアルバム。USインディーレーベル<Jagjaguwar>と契約して待望のデビューです。
プロデューサーにはSolangeやBanksで手腕を発揮しているTim Anderson。新人とは思えない深みのあるヴォーカル、またドスドス来るようなトライバルなサウンドが好感触でした。独特の存在感と壮大な世界観で今後も化けそうな彼女、とても面白いと思います。

19. Katy Perry - Witness

2017年のポップ界に狂気を巻き起こしたケイペリさんの4thアルバム。
アギレラさんの『Bionic』との類似性が指摘されてましたが、コレも見事に大ゴケ過剰プロデュースアルバムの一員に仲間入りを果たしました。が、本人は気にせずブッ飛びまくってて最高。ポップ界の希望。近頃のMax Martin一派はギラついたサウンドで攻めてますが、本作もビジュアルと同じく'80sライクなゴテゴテのシンセサウンドが目立ちます。でも、何だかんだKaty印のポップネスは保証された良作。(ネタ的に)いろいろと美味しかった"Bon Appétit"は至高です。

18. Jessie Ware - Glasshouse

イギリスはサウス・ロンドン出身のJessie Ware、3枚目のアルバムです。
前作はBenny BlancoとBen Ash(Two Inch Punch)によるプロデューサータッグBenzelが中心となったポップレコードでした。今作ではグッとソウル寄りに振れ、パワフルな歌声をメインとした深みのあるアルバムとなりました。情熱的で力強いトラックや優雅な3拍子がホントに素敵で、こんなJessie Wareのアルバムが聴いてみたかった。枯れたボッサ調で歌謡曲風味な"Selfish Love"、アルバム1ポップな軽めの"Your Domino"など聴きどころも満点です。ボーナストラック"Love To Love"はおまけには勿体ないくらいなオトナのラブソング。

17. Goldfrapp - Silver Eye

UKインディーシーンで大御所感のあるGoldfrappの7枚目のアルバム。アルバム毎にコロコロと音楽性を変えてきたGoldfrappですが、今作ではエレクトロポップに回帰し、『Supernature』あたりを彷彿とさせる作品となりました。といっても、10余年の間でどんどんスケール感をアップしてきた彼女ら、安っぽさはなく冷たい空気感が心地よいシンセポップアルバムで単純にカッコいいです。"Become The One"とか"Everything Is Never Enough"あたりのちょうどいい軽さも好みでした。でもやっぱりブリブリ鳴ってる"Systemagic"が好き。真新しさはちょっとないのだけれど、待ってましたという感じの作品。

16. London Grammar - Truth Is A Beatutiful Thing

イギリスはノッティンガムが拠点、紅一点Hannah Reidを中心としたオルタナポップバンドの2作目。デビュー作から4年ぶりとなるアルバムですが、スケール感はそのままに深化したサウンドでただただ美しい作品です。Hannah嬢のヴォーカルも久々に聴けて嬉しい限り。凄みも増したし、いつ聴いても素晴らしいです。1曲目からいきなりスケールたっぷりに広がりを見せる"Rooting For You"に続く壮大なトラックたち、そして"Oh Woman Oh Man, ""Hell To The Liars"でクライマックスを迎え、さらに中盤のシリアスな"Everyone Else"、"Non Believer"までの流れが最高にカッコいいです。後半もズッシリ、しめやかに締めて充実の1時間。いつかライブで見てみたいバンド1位です。日本公演やって...。

15. Kehlani - SweetSexySavage

歌って踊れる系シンガー、Kehlaniのデビューアルバム。
G-Eazyとのデュエット"Good Life"のヒットも記憶に新しいですが、Kehlani本人はしっかりとしたR&Bを主体に、ポップセンス光るトラックの数々を届けてくれました。"Distraction"みたいなメロウな楽曲から"Gangsta"あたりのドープなトラックもお手のモノ。90-00年代の懐かしR&Bっぽいスタイルと、何よりカッコ可愛い歌声がイイです。ちょっぴりハスキーな、情熱的で切ない感じがまた素敵。
サマソニでは、LGBTQアンセム"Undercover"や"I Wanna Be"でバキバキ腹筋を披露しながらガンガン踊る激アツアクトを務めてくれました。

14. SZA - Ctrl

新世代R&B歌姫SZAのデビューアルバム。
独特のスタンスというか立ち位置ですが、レイドバックしたノリで伸びやかにキュートなヴォーカルを自在に操る彼女。浮遊感ただよう不思議な感覚ながら、とにかく気持ちいい50分。とびっきりメロウな上質R&Bトラックにうっとりでした。全曲ハイクオリティでどれも好きなアルバムですが、中でもポップめな"Prom"がお気に入りです。この手のジャンルだと昨年はSolange、そして2017年はSZAと名作が続きますね。キャラも気取らずキュートなSZAちゃん。ずっと聴いていたい1枚です。

13. Vince Staples - Big Fish Theory

カリフォルニア出身のラッパー、Vince Staplesさんの2ndアルバム。Flumeの客演つながりではじめて知りました。
ゲストにKendrick Lamar、プロデュースにはSOPHIEとFlumeタッグ(!)という激ヤバトラック"Yeah Right"を筆頭に、サイバーな無機質サウンドに乗せて縦横無尽にラップをかますスタイルに一発で惹きこまれました。シーンから浮く異質な存在感を放つアルバムですが、分かりやすく文句ナシのカッコよさで痺れました。透明ケースに金魚ディスクという、シンプルで素敵なアートワークもツボ。Coolの一言に尽きます。

12. Hercules & Love Affair - Omnion

ニューヨーク出身のDJ、Andy Butlerらによるハウスミュージックを主体としたプロジェクトチーム・Hercules & Love Affair。彼らの通算4枚目となるアルバム『Omnion』です。
今までの作品も好きでしたが、少し玄人向けというかポップス耳にはインパクト不足かなと聞き流していました。が、今作ではSharon van Etten, The HorrorsのFaris Badwanらをゲストボーカルに迎え、趣向を変えてきた印象。結果として、歌って踊れる良質なハウスチューンとダンスポップで固められた1枚となっており、丸っと楽しめました。表題曲"Omnion"はホントに好き。

11. Logic - Everybody

こちらも今年を代表するヒップホップアルバムですね。Logicの3枚目のフルアルバム『Everybody』。
過去作品ではキルビルオマージュなど、オタク趣味とヒップホップの化学反応がありとても好きなラッパーです。今作では一転して、人種問題・若者の自殺などシリアスな社会的メッセージを多分に含んだラップを主体とした作品となりました。寸劇チックなインタールードとキレキレラップで埋めつくされたトラック群はただただ圧巻。パキッとしたサウンドで、ガンガン行くライミングはめちゃくちゃアガりました。そして"1-800-273-8255"は国宝。ポップで聴きやすい・メッセージ性も素晴らしい、まさしくLogicの会心作!
イケイケな奥様と来日旅行してたし、日本公演も期待したいところですね。

10. Dua Lipa - Dua Lipa

今年イチ躍進した新人女性アーティストの1人Dua Lipa。幾度となくアルバムが延期され(*Deep Breath*)、やっとのことでデビューアルバムがドロップしました。
大型プロデューサー/ライターを数多く起用したテコ入れが功を奏したのか、"New Rules"でチャート1位を記録するなど、Diva不況の昨今でも目一杯ブチアゲてくれました。貫禄すら感じる低めのヴォーカルで、「Mwah💋」と来たらもうイチコロ。Miguelとのクールなデュエットや、ミッドバラード"IDGAF"もハマっててアルバム再生も1年通して多かったです。
サマソニのライブでもチャリ子不在の中、抜群にカッコよくキメており好印象でした。地獄よりホットだったライブ効果もあり、トップ10にランクインです。

9. Mura Masa - Mura Masa

新進気鋭のDJ/プロデューサーMura Masaこと若干21歳のAlex Crossanくんによる1stアルバム。
Charli XCXやA$AP Rockyら豪華客演陣もさることながら、ポストEDM、さらにトロピカルハウスの先をもビシビシ感じるトラックづくりで若き才能がほとばしる1枚でした。
トロピカルハウス自体は正直食傷ぎみでしたが、ユニークかつ"抜け感"のあるトラックで飽きることなく聴けました。ユルくノレる、新感覚ダンスミュージック。中身と同様ジャケットもオシャレで素敵です。"Firefly", "Second 2 None"あたりの切なさ全開トラックが夏の終わりにハマりました。

8. Vera Blue - Perennial

オーストラリアはシドニー出身のシンガーソングライターVera Blue嬢の1stアルバム。
正確には本名Celia Pavey名義でフォークシンガーとしてのキャリアがありますが、オーストラリア版Voiceに出演し「Vera Blue」として再スタートしています。
フォークとエレクトロを融合したサウンドメイキングで、ちょっとダークめのとんがったポップを展開。どこか北欧風味でもあり、繊細なメロディーと予想外に力強い歌声がカッコいいです。"Private"や"Lady Powers"といった攻撃的なエレクトロポップに、"Regular Touch"みたいなヘンテコポップと盛りだくさん。しっとり美しいミッドバラード("We Used To", "Pedestal", "Mended")も堪能できます。
Goldfrappとかiamamiwhoami好きにもオススメできる要注目の新人です。

7. Kelela - Take Me Apart

PBR&Bの流れからさらに進化したオルタナR&Bを牽引する次世代シンガーKelela。Björkも惚れこんだ才女ですね。
ArcaやAriel Rechtshaidらをプロデューサーに迎えた複雑なビートに乗せて、Aaliyahライクなスムースな歌声を響かせています。重低音とシンセベースがカッコいい1stシングル"LMK"は宇多田っぽいなんて言われてましたね。変則ビートやスペーシーなシンセが繰り出されるまさしく近未来のR&Bながら、耳馴染みの良いメロで魅力たっぷりなアルバム。何となく深夜によく聴いてました。"Take Me Apart", "Onanon", "Truth or Dare"あたりがお気に入りです。
EP『Hallucinogen』も含めて良かったし、ビジュアルも攻めてて今後の活躍が楽しみです。

6. George Maple - Lover

こちらもオーストラリアの新人、George Mapleのデビューアルバム『Lover』。
What So NotやFlumeの客演でキャリアを積んできた彼女ですが、相次ぐシングル曲のリリースを経てついに1stアルバムを完成させました。
スキットによるインタールード含め全20曲という大ボリュームですが、1stシングル"Sticks and Horses"から"Romancandy"のドープなアーバンチューン、またロッキッシュな表題曲"Lover"などクールかつセクシーなヴォーカルが良いです。さらに"Kryptonite","Hero"といったアンセムソングがパッケージングされ、どの曲でもグラマラスな歌声が存分に発揮されています。wikiページも存在しない知る人ぞ知るアーティストですが、曲のクオリティは高いと思うので聴いてみて!

5. Björk - Utopia

恋愛に目覚めた発情BBABjörk御大による2年ぶりのアルバム。前作『Vulnicura』では失恋というか離婚体験から、ヒリヒリとした感情をストリングスに乗せて音楽を紡いでいましたが、それを乗り越えての9枚目です。
今作はのっけから「Tinder(出会い系)アルバムよ❤️」と豪語し、発売前から界隈をザワつかせました。しかし蓋を開けて見れば、Björkが培ってきた豊かなサウンドで圧巻。まず印象的なのは、新たに結成された女性フルート隊によるオリエンタルな音世界。さらに前作よりプロデュースで続投したArcaも、超自然的なビートでBjörkと一体となり別世界を構築しています。過去作(『Homogenic』,『Vespertine』あたり)のエッセンスを感じるハープの音色や美メロもグッときました。1曲目の"Arisen My Senses"から聴き手を飲み込むスケール感は感涙モノ。
迦陵頻伽のようなビジュアルに相応しく、独自のサウンドで天界の音楽を奏でるBjörkなのでした。ジャケ画でドン引きして聴かないのはもったいない!

4. Tove Lo - Blue Lips (Lady Wood Phase II)

スウェーデン出身のシンガーソングライターTove LoによるLady Woodシリーズ第2弾。
11月はブッチ切りでこのアルバムに夢中になりました。トヴ子、最高。
前作から引き続きプロダクションチームThe Strutsを率い、メチャクチャ上質なシンセポップが並びます。トヴ子のメロディーセンスも相変わらずというか磨きがかかっており、エモーショナルな歌唱と相まって非常にエモい1枚。ドラッグ・セックスがテーマなのは同じなのだけれど、冷徹なスタンスから盛り上がる前作から地続きで、さらに熱っぽくアドレナリン垂れ流しな1時間弱が気持ち良いです。締めの"Hey You Got Drugs?"も大団円的フィナーレを飾っていて美しい。
1stシングルのタイトルが"ディスコ乳"な時点で裏切らないスケベ女子のバイブル盤。Tove Loに一生ついてイきたいと思わせる傑作です。円盤も早くつくって…。

3. Lana Del Rey - Lust For Life

Lana Del Reyの4枚目となるフルアルバム『Lust For Life』。デビュー時から一貫して自らのアート"サッドコア"を体現してきたおラナですが、今作はファンの為のアルバムということで雰囲気を変えてきました。といっても基本は変わらず曲はおラナ節が健在ですね。
収録時間は過去最長を更新し、新たにヒップホップやカントリーアクトとの共演も果たした意欲作だと思います。ヒップホップやトラップとの相性はこれまでの作品でも垣間見せてきましたが、絶妙なディレクションで1つネクストレベルに達した形でしょうか。おラナ、多作の割に全くハズさないあたり流石…。
"Love"で見せた微笑も衝撃でしたが、破滅と希望を抱き合わせたような曲の数々で2017年を象徴するアルバムです。大名曲"Get Free"でフワッと終わらせるのも粋。
悲劇のヒロインを演じることを辞めたおラナの実力を噛み締めたアルバムでした。

2. Lorde - Melodrama

ニュージーランド出身の21歳Lordeちゃんの2ndアルバム。前作『Pure Heroin』では"Royals"が大ヒットし世界を席巻しましたが、その後蛇女軍団に取りこまれちょっと迷走した彼女。4年ぶりとなる本作を製作するにあたって、Britney SpearsやRihanna, Katy Perryらポップスターに対するリスペクトを語っていた彼女ですが、そのポップミュージックに対する愛を形にしたような素晴らしいアルバムでした。
飛ぶ鳥を落とす勢いのJack Antonoffを中心に据えたプロダクションで、まず"Green Light"で掴みはバッチリ。Tove Lo("Homemade Dyanamite")やFlume("The Louvre")をライターに起用するなど人選もカンペキ。Robynの名曲"Dancing On My Own"に匹敵する"Supercut"から"Perfect Places"と、頭から終わりまで上質なポップで大大満足。そして、名バラード"Liability"。若さとヒネりがある切ないリリックが良いよね。ってことで次作も期待大です!!


1. The Sound of Arrows - Stay Free

エレクトロポップデュオ・The Sound of Arrowsの5年ぶりとなる2ndアルバム。
前作『Voyage』も彼らのつくるアトモスフェリックなドリーム・ポップを堪能できる良作でしたが、今作では歌モノ寄りの作風となり、100%ピュアなポップソングをそろえた素晴らしいアルバムを届けてくれました!!
共同プロデューサーとしてRichard Xが引き続き登板しており、レトロSFなサウンドで懐かしい感じ。繰り返される「There Is No Beginning」のオープニングコールから始まり、まるで1本の映画を観ているような45分間、聴き終えて多幸感に浸れる作品です。
ディズニーのミュージカルのような"Beautiful Life"を筆頭に、キラキラしたシンセに繊細なストリングが挟まれる美しいトラック"Don't Worry"、切ないミッドバラード"The Greatest"など、美しくも温かみのある曲が目白押し。エンドロールのようなNiki & Doveとのコラボ"The Shade of Your Love"と来て、また「There Is No Beginning」へ還っていく。極上のポップソングにより作りこまれた世界観が感動的で、優しく人を勇気づけるアルバムだと思います。冬にかけて繰り返しよく聴いていました。
マイナーアーティストですが、とにかく1度聴いて欲しい作品です。大好き!


以上、2017年のアルバムベスト20でした!
何書けば良いか分からなかったので好き勝手語りましたが、楽しんで頂ければこれ幸いです。
勢いでブログ作っちゃったので、何かしら企画して続けたいと思います。ご贔屓にどうぞ。